1.釣りができる温泉(中部・北陸)
伊豆、信州と温泉としても釣りでも最も魅力のスポットをかかえるエリア。特に伊豆は大小約60の温泉を持つ温泉半島で、周囲を囲む海はどこからでも竿をだせる。信州も温泉、釣りともに魅力だが、釣りは渓流と湖沼になるため、一部の魚をのぞいては禁漁にどう対処するかである。そのかわり素朴で味わいのあるいで湯は多い。

和倉温泉 石川県能登
七尾城は守護畠山氏の居城で、越後の上杉謙信の2度にわたる侵攻で落城した。
この時謙信が本丸台に立って詠じたのが「霜は軍営に満ちて秋気清じ 数行の過雁三更 越山併せ得たり能州の景 遮暮家郷の遠征を憶ふ」の謙信の「九月十三夜」の詩。
松尾山にある城跡から見る展望は前に能登島を置いて昔も今も変らないはず。
歴史的に能登半島で最も重要な位置を占めた七尾は現在は半島第一の市で、市内の和倉温泉は能登第一の規模を誇る温泉。
発見は1000年以上前と伝えられるが、飛躍的に発展したのは戦後になってからで、今は能登島、机島、種ガ島を望む海岸線に約60軒の近代的な旅館やホテルが林立している。
温泉は高温で湯量が多く、共同湯もあって、さらに歓楽色も濃く、海上遊覧や多彩な郷土芸能も伝わって団体、保養、行楽など客層が幅広い。豪華な旅館が多いなかでも、その内容と規模で全国区の知名度を持つのが加賀屋。みやげ物店、クラブ、割烹が軒を連ねる1階の全長80mの錦大路や3階まで天丼が吹き抜けの男雛の湯など、さすがである。

釣り
和倉温泉の楽しみのひとつが、沖にいくつも浮かぶ、カキのいかだ周りの釣りである。
ボラの待ちやぐらで知られる七尾湾だから獲物はポラが主かと思うと、これはめったに釣れない。最も多いのはこの地方でハチメと呼ぶメバルで他にキスやチヌが続く。ただしチヌは小型が多い。
遊漁船は旅館で手配してくれる。


熱海温泉 静岡県東伊豆
伊豆半島の東側の玄関にあたるところに位置する熱海は平地がほとんどなく、大半の土地が急傾斜地になっていて、400軒のホテル・旅館、そしてリゾートマンションや会社の寮が海岸線から斜面の上まで建ち並んでいる。
熱海の名は昔、海に熱湯が湧出していたところからついたもので、400軒の旅館の大半は近代的設備の高層建築で収容力が大きい。もちろん日本屈指の大温泉で、開湯は奈良時代以前と古い。
慶長2年(1597)には徳川家康が来湯し、明治に入って湯治や避暑客が訪れだした。
そして熱海の名を決定的にしたのは、この地を舞台にした尾崎紅葉の小説『金色夜叉』である。ダイヤに目がくらんだお宮と貫一の別れの地にあるお宮の松は2代目だが、海岸にあって、記念写真のベストスポットになっている。
昼の熱海は明かるく健康的なリゾートだがネオンが灯るころになると大歓楽温泉に変ぼうする。
芸妓・コンパニオンの数も多く、飲食店も賑わって、ソープランドもあり、東洋のナポリと呼ばれる夜景もすばらしい。

釣り
東海汽船の大島船が発着する熱海港の向かい、熱海後楽園前の堤防が狙い。
堤防の上に立ってみると水深はあるが、底が平坦で水が澄み、小物しかでそうもない感じ。
事実釣れるのはサビキのアジ・サバ・イワシが圧倒的で、エサ釣りもボラとウマヅラくらい。
ところがこの堤防、たんねんに寄せエサをまいてマズメ時を狙うと、メジナとクロダイが上がる好ポイントなのだ。それも両魚とも1kg以上が釣れるのだからたまらない。


伊東温泉 静岡県東伊豆
古くから熱海とともに東京の奥座敷であった伊東温泉は、名前が示すように伊豆半島の東に位置して、市街を流れる松川畔一帯を中心に広い温泉街を作りあげている。
伊東は江戸時代から湯治場として栄えた温泉で、昭和13年の伊東線の開通で伊豆半島の中心として発展し、相模湾に面する温暖な気候と観光以外にミカン、近海漁業という産業もあるところから、他の温泉地とはひと味ちがう落ち着いた温泉街の雰囲気をかもしだしている。
旅館数約100軒、収客2万人は質。量ともに半島随一で、これに約100軒の民宿が加わる。そのくせ温泉街に散在する飲食店は観光客だけでなく、土地に溶けあって浮いた感じが少ない。
江戸城に御前湯として献上した記録が残る温泉は食塩泉、亡硝泉、単純泉。源泉の数800、湧出量の昼夜約3万5000klは日本の温泉地の中でもきわめて豊富。

釣り
伊東温泉周辺の釣りは磯、堤防、渓流、投げ、アユ、湖沼、それに沖釣りも加わって多彩である。
温泉街を流れる松川は芸妓さんたちのタライ乗り競走で知られているが、アユ釣りでも人気の川。ただ、街中を流れるだけに釣趣に欠ける。
アユは海岸通りを走るR135のなぎさ橋より上流で、橋を境に河口部はポラ(イナ) 一色で、これはギャング釣りが有効。
渓流というよりヤマメは氷川で、伊豆スカイライン近くに行けば釣れるが、期待するほどの釣果は得られない。
湖沼は一碧湖まで足を伸ばす。
現在の天皇が初めてブルーギルを放流したことで知られるこの湖は、湖全体が浅く、湧き水もあるので水温の上昇が速く、ヘラブナもブラックバスも2月から釣れだし、ヘラは4月の第1週から乗っ込みが始まる。
ブラックバスはボートで岩の障害物周りをチェックしていく。ルアーはワーム、グラブ、チューブなどソフトルアーが圧倒的に有利。
温泉からの釣りは浴衣がけでも行ける伊東港が一番/港内に伸びる3本の堤防のうち右側の白灯と、その右川奈側にある第一堤防がよく、春は投げ釣りのキス、夏は小物のサビキ釣りと小メジナ、そしてソウダガツオで、秋は小物と投げ釣り。
また、港内中央の汽船発着堤防は夜釣りで冷凍アミをエサにしたウキ釣りにアジが寄り、松川河日の赤灯はこれも夜釣りで大型のクロダイが釣れる。ポイントは河口側。
他に川奈漁港ものどかな好釣り場である。


下田温泉 静岡県南伊豆
下田は稲生沢川が下田港に注ぐ河口に発展した港町で、黒船来航によって鎖国日本から開国日本への口火を切った歴史の町である。
港を中心に広がる町には独特のなまこ壁があって情緒を感じさせ、オシャレな喫茶店やレストランの間に共同湯や早朝から千物を焼く勾いを漂わせる食堂が混ざる。
大島船も発着する下田港の東には野水仙の群生と素朴な魚村風景を見せる須崎半島があって、北には吉田松陰が隠れ住んだ蓮台寺温泉がある。
下田は南伊豆交通の要。
伊豆急の終点駅で東伊豆道路も終わり、かわって伊豆西海岸を走るRl36が始まる。
駅前には各コースの観光バスが集結し、下田港から港内周遊の他に石廊崎方面への遊覧船も出ている。
温泉旅館は東は下田港に沿うR135線上に、西は旧市街部に散り、70軒のほとんどがデラックスな近代建築である。
下田で歩いてみたいのがペリーが了仙寺で日米和親条約の締結のために歩いた平滑川沿いのペリーロード。
かつての遊郭街であったこのあたりは今、古さのなかに新しさをとり入れた下田のニュースポットとなっている。

釣り
下田港の大走島をトンネルでつらぬいているのが大走堤防。
市街から近いうえに四季を通して釣魚が多彩で、湾内にあるため多少の風なら安心して釣れるうれしい釣り場だ。
投げ釣りはシロギスで、周りが深いため冬でも好漁がある。人気があるのは堤防内外どちらでもOKのアジ、イワシのサビキ釣り。春から秋まで釣れて、冬はアジの友エサのウキ釣りにする。ウキは重量のあるものを使って、50mほど内側に投げる。アジ、ボラ、コノシロが釣れ、全て良型である。おもしろいのは堤防内側のヘチで釣るウミタナゴ。
もともと棲息環境で大きく体色が異なる魚だが、ここで釣れるウミタナゴは胴部がまっ黒で、各ヒレが真紅のまったく別種としか思えない魚である。
他にマダイ、メジナ、クロダイが釣れる。
ただしクロダイなら対岸の須崎から伸びる福浦堤防の方が数段上位の釣り場。
魚影が濃いうえに交通の便がわるいので大走堤防に比べて釣り人が少なく、マニアの堤防だ。
時期的には5~10月で、稲生沢川の濁りの入る日がチャンス。深場より浅場がよいので、堤防壁近くのかけあがりや藻の先などを重点的に攻める。エサはオキアミがベスト。



三谷・形原・西浦温泉 愛知県三河湾
蒲郡は愛知県の東部、三河湾に臨む都市。
三河木綿で知られる織物や繊維ロープなどの産業も盛んで、蒲郡港は自動車などの輸出入港として活気がある。その海岸線には三河湾国定公園の中心となる三谷、形原、西浦の温泉が連らなる。
JR東海道線三河三谷駅の南東、海岸線から高台にかけて約20軒の旅館が点在する三谷温泉はバス停付近にみやげ物店やバーがあるくらい
で温泉の匂いがないが、設備のよい大旅館もある。三河湾の景色がよく、遠浅の海岸は夏は海水浴で賑わう。
三ケ根山の東麓に湧く形原温泉は10世紀の開湯で、周辺の温泉では最も古い歴史を持つ。
設備がよい旅館やみやげ物店、飲み屋に混じって坂道に建ち、三河湾を見おろしている。
三河湾に突き出た西浦半島の先端高台に近代的な旅館が並ぶ西浦温泉は、日が落ちると浴衣がけの温泉客が繁華街にくりだして歓楽色が濃い雰囲気。いずれの温泉にも共通するのが芸者大学。受講するのもおもしろそうだ。

釣り
三谷港は釣趣に欠けて魅力なし。形原の間港(くじ港)は浅いので大潮の満潮前後が条件になるが、堤防先端でメバルとアイナメが釣れる。西浦は松島岩礁と陸を結ぶ長大な松島突堤が狙い。海底が複雑で、アイナメ、メバル、クロダイ、カサゴが有望。


上諏訪温泉 長野県諏訪
高島藩の城下町として栄えた上諏訪は、今は東洋のスイスと呼ばれる時計や光学レンズなど精密工業のメッカ。
諏訪湖は東西に長い楕円形の湖で、注ぐ河川が大量の有機物を供給するため棲息する魚類が多く、早くから漁業が盛んであった。
ここで有名なのが御神渡。
湖面が氷結する冬の夜、大音響とともに氷に亀裂ができて翌日、高さ1m、長さ3kmに亀裂部が盛り上がる。諏訪ではこれを御神渡といって、諏訪大社上社の男神が下社の女神へ通う道と伝え、その方向によって豊凶が占われる。
諏訪湖東岸に湧出する上諏訪温泉は温泉天国長野県下でも有数の温泉。
湖畔に間欠泉が高さ50mも噴き上げるように
湯量が豊富で、JR上諏訪駅の1番ホームに露天風呂、駅前丸光デパート5階に大浴場、そして中央自動車道諏訪湖SAに引湯され、北澤美術館隣の諏訪市温泉植物園では温泉熱を利用して熱帯。亜熱帯植物が育てられている。
90軒を超える温泉宿は湖畔からJR上諏訪駅にかけて点在し、歓楽度も強いが、霧ガ峰。白樺湖方面観光の基地としても利用されている。

釣り
諏訪湖の釣りといえばワカサギ釣り。
夏でも釣れるが、やはり趣は冬にある。
それも諏訪湖名物の屋形船を使えばストーブがあって、22~24度のポカポカ状態で楽しめる。竿は30~40cmの短ザオで胴突き7本バリの仕かけにエサは紅サシ。船内に2本の側溝があって、釣り人は背中合わせで竿を出すシステムである。船宿はみなとなど各旅館で手配してくれる


白骨温泉 長野県 安曇
世界に誇る山岳景勝地。上高地、その玄関にあたる地点に位置するのがなんとなく怪しげな
名の白骨温泉。
梓川の支流湯川沿いに湧いて、木造りの旅館が急傾斜の山々に囲まれて建つ落ち着いた雰囲気。江戸時代から知られた名湯で、点在する露天風呂からあふれる湯は牛乳のように白濁している。
これは硫化水素の酸化によって白く濁るもので、白骨の名は湯船が白くなるために″白船の湯″と呼んでいたものが変ったもの。
白骨温泉の名を一躍有名にしたのが中里介山の小説『大菩薩峠』。
小説の舞台として登場するとともに、大菩薩峠を執筆するために帯在した湯元斎藤旅館は今も健在で、バス停近くには大菩蔭峠の文学碑も立っている。
白骨温泉は上高地と乗鞍高原の2つのビッグな観光地をひかえる温泉で、宿泊客もこのどちらかを訪れる途上の観光客が多い。
上高地は北アルプス穂高連峰とその東に連なる常念、蝶ガ岳の谷間、梓川沿いに開けたリゾ清らかにせせらぐ梓川沿いには白樺、モミ、コメツガなどの原生林に囲まれて大正池、田代池、明神池が散在し、梓川河畔には赤い屋根の帝国ホテルが建って若い女性の心をときめかせている。
ここはまた、日本アルピニズム発祥の地で、日本アルプスの名を世界に広めたウォルター・ウェストンの碑が立つウェストン広場では毎年6月第1土・日曜にウェストン祭りが行われる。
もうひとつの乗鞍高原は乗鞍岳の東麓に広がる標高1400~1500mのなだらかな高原。白樺やカラマツの林の中にオシャレな宿泊施設が点在し、水生植物が咲く湿原や牛が草を食むのどかな風景が見られる。
その中にハイキング、サイクリング、フィールドアスレチック、キャンプなどのアウトドアの施設が散り、日本一高い所を走る乗鞍スカイラインの山岳ドライブも楽しめる。

釣り
白骨温泉を流れる湯川は鉱毒があるため魚が棲まず、梓川上流も稚魚放流のため禁漁である。そこで狙いは奈川渡ダム。
ここは人造湖特有の足場の悪さで湖岸に降りられるところが少なく、ボートも禁止なので手つかずの場所が多く、魚には絶好の棲み家。
魚はイワナ、ヤマメ、レインボー、ブラウン、ウグイ、コイ、ワカサギがいて、ポイントはとりあえず各沢の流れ込み


奥飛騨温泉郷 岐阜県 上宝村
飛騨高山で最も魅力を感じるのは出格子が並ぶ昔の面影を残す三町筋。
高山城主金森氏が高山を商人の町として発展させたために商家が集まり、今も高山の造り酒屋がこの区域に集まり、老舗ののれんが目立つ。
もちろん春秋の高山祭りも魅力だが、町角で買ったみたらし団子をかじりながら二町筋を漂い歩く……旅に出てよかったなと本当に思う時である。
高山からR158で東へ約40kmの高原川上流に湧くのが平湯温泉。
奥飛騨温泉郷はここから高原川とその支流の蒲田川に沿って平湯、福地、新平湯、栃尾、新穂高の順で山深く続く。
〔平湯温泉〕武田信玄の家臣が見つけたと伝えられる温泉で、R158で高山とも上高地とも結ばれている。旅館は20軒で民芸調の宿もあり、朴葉味噌が味わえる
〔福地温泉〕平家落人伝説を残す静かな温泉で、高原川左岸に約10軒の旅館が素朴なたたずまいで散在している。どこも専用の露天風呂を持ち、民芸調から湯治用まで雰囲気はいろいろ。
ここはまた数億年前の化石もでる化石の産地でもある。
〔新平湯温泉〕奥飛騨温泉郷のほぼ中央、高原川河畔に開けた温泉で、近代的なホテルから民宿、ペンション約60軒が建ち並び、独特の湯の町風情を見せている。
近くにはクアハウス。ヘルシーランド奥飛騨や奥飛騨クマ牧場がある。
〔栃尾温泉〕高原川と蒲田川の合流点近くにあって、約20軒の宿のほとんどが民宿という奥飛騨では異色の温泉。
河原の共同露天風呂とともに川魚と山菜料理
が魅力である。
〔新穂高温泉〕蒲田川に沿って下流から蒲田、佳留萱、槍見、中尾、穂高、新穂高と続く温泉の総称で、奥飛騨温泉郷の最奥に位置している。
北アルプスの飛騨側の登山口にあたって登山の基地の性格も残すが、新穂高ロープウェーもあって一般観光客も多い。旅館は約50軒で露天風呂を持つところが多く、ワイルドで素朴な魅力の温泉である。

釣り
高原川は各温泉付近でイワナ、アマゴが釣れるが、温泉客が多いためやや場荒れぎみ。ただし温泉の湯が流れ込むので思ったより水温が高く、解禁当初から良型が釣れるのが特徴。


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