1.防波堤は魚の宝庫。というのも、
周辺には魚のエサとなる小動物、プランクトン、海藻などが多く、それらを求めてたくさんの魚が、自然と集まってくるからである。
防波堤釣り=小物釣り、と思っている人がいるとしたら、それは間違い。防波堤といえども、大物が釣れることは珍しくないし、回遊魚が姿を見せることもある。
種類、大きさとも多彩な防波堤はまた、1年中同じ魚ばかりが釣れるわけではなく、季節に応じて対象魚が変わり、私たちを楽しませてくれる。防波堤釣りの楽しさ、おもしろさは、四季折々の対象魚が、はっきり色分けできるところにある。
それらにくわえ、同じ防波堤で、ある人は
大物釣り、ほかの人は投げ釣り、家族連れはサビキ釣りなど、それぞれの釣り方で楽しめるのも、防波堤釣りの特徴である。
安全性、手軽さ、つりやすさなどから考えて、海釣りの入門には最適の防波堤釣り。これから釣りを始めようという人には、自信を持っておすすめできるフィールドである。
地域の違い、湾奥や外海などの場所によっても、多少のズレが生じることはあるし、何が釣れるかわからないのを楽しむ五目釣りも、防波堤ならではといえるだろう。
2.防波堤釣りの魅力
海岸線から沖に向かって突き出ている防波堤は、いながらにして岸からはなれた沖合いで、釣りが楽しめる便利さがあります。
四方を海にかこまれた日本には無数の港がありますので、当然防波堤もたくさんあります。
防波堤釣りは沖釣りと違って、船の出る時間などに拘束されることもなく、自由にでかけて行っては好きなときに帰れる気安さもあり、もっとも手軽に海釣りが楽しめる魅力があります。
防波堤の周囲には岩石が散在し、海藻が茂って魚のよいすみ家となり、堤防の壁面には貝類がつき、海藻にからむ小エビ、小魚など魚の好むエサも豊富なので、回遊する魚もたくさんいます。防波堤を回る潮流も堤防の形態によってさまざまに変化し、魚が寄りやすいという防波堤の構造に合わせて、絶好のポイントになっています。
家族で楽しめる
内湾に面した防波堤での釣りは、足場が完全に護岸されていて安全なのですが、外洋に面した堤防では、波を消す役目を果たす消波ブロックの上などで釣る場合もあり、危険と背中合わせの場所もありますから、十分に注意して釣りを楽しんでいただきたいと思います。
歩いて行けない沖にある堤防へは、渡し船の便がある所も少なくありません。短い船旅ですが、家族連れにはきっと喜ばれることでしょう。
家族連れの旅行プランにみんなで楽しめる堤防釣りを加えると、一層楽しくなります。
場所によっては堤防への立入禁止などの規制もありますが、最近では公共施設同様に防波堤を釣り人のために解放したり、少しずつながら釣り公園が設置されてきたのはとても喜ばしいことです。
四季折々に楽しめる堤防釣りは最近盛んになってきました。
防波堤釣りは、四季を釣るといっても過言ではないぐらい、1年中、多種多様な魚が釣り人を楽しませてくれる。
春に釣れ盛った魚が釣りなくなってきたと思うと、夏の魚が食いだし、それもやがて秋の魚に変わって寒風が吹き始めれば、冬の魚が釣れだす。防波堤の釣りは休む間がない。
魚種によっては通年、釣れるものもいるので、ねらいは各人のお好みしだい。釣れる魚を片っ端からねらいを定めて制覇するもよし、頑固一徹、一つの魚を追いかけ続けるのもよし。懐の深いのが防波堤釣りなのである。
ひと口に春の海といっても、 3月と5月では大きな差がある。 3月は人間からみれば、心浮き立つような季節だが、海の中はまだだ。
冬。クロダイ、メジナ、ウミタナゴなど、産卵を控えた一部の魚たちと、冬の魚は釣れてくるものの、全般的にまだ魚の活動は活発でなく、水温の上下動が激しいために釣れ方にもムラが多い。
それが4月になると、海もようやく春となり、水温は低いものの、わずかずつ上昇の兆しがみられ、クロダイ、メジナは本格的なつり込み態勢に入る。
5月にはかなり水温も上昇し、小魚たちが活発に動きだすようになる。
うっとおしい雨の続く梅雨だが、意外なほど海は静かで、波も春に比べて穏やかである。
釣れる魚種は多彩になって、湾奥の防波堤などでは、ヘチ釣りのクロダイやシマダイが本格的に食いだし、アジやイワシなどの回遊魚の魚影も濃くなる。
梅雨明けとともに、 日中の釣りは難しくなってくるが、小物の食いは活発だ。涼を兼ねての夜釣りでは、大物のスズキ、クロダイはもとより、アジ、サバ、カサゴ、アナゴ、イシモチなども楽しめる。大物に限っていうなら、花火などが終わって、防波堤周りが静かになった真夜中頃に、食いの立つことが多いのでねらってみたい。
彼岸の頃までは、夏の延長といった感の強い防波堤も、心地よい秋風が吹き始めると水温も下がりだし、魚の食いもよくなる。つまり、魚の活性が一気に高まるのである。 9月末頃から、11月初旬にかけては、1年中で最も多種多様な魚で防波堤がにぎわう。
大物をねらいたい人にとっては、エサ取りや外道たちに悩まされる季節でもある。釣り方やエサにひと工夫欲しいところである。逆に、小物の数ねらいなら、初心者でも期待できる季節だし、大釣りも決して夢ではない。
11月も初旬を過ぎる頃には、高かった水温が徐々に下降しだし、湾奥の防波堤などでは、早くも冬の魚であるアイナメなどが食いだしてくる。外海側ではカイズ級のクロダイ、メジナの好シーズン到来である。
12月になった途端に冬の魚に変わるわけではないが、水温は少しずつ下がってきているので、エサ取りの活動は収まってくる。クロダイやメジナの良型をねらうには好都合だといえよう。
釣るほうとしては少し寒いのが気になるが、夜釣りでは、大型のスズキやメバルがおもしろく、カサゴも充分に楽しめるのもこの季節ならではだ。そして、冬の魚といえばアイナメ、カレイ。これらが最盛期を迎え、抱卵した大型の可能性も高いので気は抜けない。
1月の中旬を過ぎると、水温は一気に下降することが多く、釣り物はぐっと減ってくる。
アイナメ、カレイ主体のなかに、ウミタナゴが増えだし、2月に入ると南の地域から順にクロダイが食いだす所も出てくる。
防波堤の構造
防波堤の種類はいろいろあるが、ほとんどのものは、基部(海底部分)に捨て石などを沈めて基礎を作り、その上にコンクリートブロックを乗せている。中小の防波堤では、基礎部分が10m沖ぐらいまで続いているので、その間は根掛かりしやすいのが普通である。
消波ブロックが積まれている防波堤は多い。この消波プロック、 1個がおよそ80トンにもなる大型のものもあるのだが、それほど大きくない通常のものなら、台風などの大波で移動することも珍しくない。波の荒い外洋などでは、上からは見えないが、意外なほど沖目まで消波ブロックがちらばっている所もあるのだ。
消波プロックのすき間は、根魚などのすみかとしてはもってこいの条件で、エサの小動物も多いため、釣りのポイントとしては見逃せない。 しかし、足場は悪く、きわめて危険な場所でもあるので、釣り人は細心の注意を払う必要がある。特に、大型ブロックほどすき間も広いので、できるだけ立ち入らないようにしたい。そんなに無理をしなくても、防波堤は釣りを楽しめるのだから。
3.防波堤の種類
防波堤の形態は、目的や場所などによって、次のように分けることができる。
①大きな港口によく見られる沖の防波堤(沖堤、一文字堤)
②大型船が着岸する岸壁や桟橋
③漁港周りの小さな防波堤
④河口にある導流堤
⑤消波ブロック
沖の防波堤は陸から少し離れた所にあり、高さが均一のもの、一段高くなったもの、則に消波プロックが設置されたものなどがある。船で渡ることになるが、潮通しがよく、場荒れも少ない第一級の釣り場である。
大型船が着岸する防波堤は、サオ下から水深が深く、根掛かりが少ないのが特徴。海底にあまり変化のない所は、ヘチ際が釣りの好ポイントとなるケースが多いが、回遊魚についてはその限りではない。
防波堤は、場所によっては潮が通り抜けるよう、下部にすき間のあいているものがある。海水と淡水が入りまじるので、魚や小動物が集まりやすいが、波も立ちやすい。外海が静かなのに、ここだけ波が立っていることもあるので、波の状態を観察してから釣り始めよう。
4.防波堤釣りのポイント
水の変化は魚が集まる場所
仮にプールの中へ魚を放ち、釣りをすることに
してみましょう。長方形のコンクリート箱状では、放された魚はどこに集まるのかまったく見当がつかないと思います。つまり、ポイントをどこにしぼるのかがわかりにくいわけです。
これは、防波堤に関しても似かよった共通点があります。一見なんのへんてつもない防波堤、どこをどうねらうかとまどうのは当然です。
幸いなことに防波堤は海につながり、水の動きは十分にあります。水の動き、つまり変化といったほうがよいでしょう。プールに噴水状の水の動きを与えると、完全なポイントに変わります。魚たちはこの変化のある地点に集まる傾向が大きく、ひとくちでこのような所を釣りのポイントとしてさがすのがよいでしょう。
えさのある場所を探そう
次に、魚たちが好むエサがある場所はどこか見渡してみます。エサとなる小生物は、壁面につく貝類(イガイ)、海藻にからむ小エビ類、岩礁地にいる小ガニ、砂泥底のゴカイ・イソメ類です。
海底にある石(ゴロタ石)や岩、捨て石、くずれ石は、魚たちが身をかくせる絶好の場所で、適当な暗さが条件にかなって魚たちが集まります。
海藻もこれに準じて、魚の集まる所になっています。
沖側にある消波ブロックは、波気も多く、水の変化も大で、ブロックそのものが石瀬川様魚たちの身のかくし場所になるので、見のがせないポイントの一つになります。壁面につく貝のすき間や周囲には、小ガニや小エビなどが群がるので、それを魚がねらう場所としてうなずけます。
変えようのない壁面はさておいて、海底の石、海藻などの形は複雑ですから、これはある程度つかまないとよいポイントになりません。水の変化、地形、この2つから成り立つのがポイントです。
潮流がある堤防の先端をねらう
水の変化と潮流は、防波堤の形態で、どこをどう流れるかが違ってきます。
堤防の先端部は必ず潮流があるものですから、文句なくねらい場になっています。
堤防と堤防先端の間は、港内に入ってくる潮流があり、船道の水深と合わせてポイントの一つです。
堤防と堤防の継ぎ目のケーソンは、だれもがねらうポイントです。継ぎ目は大きいほど潮の交流もあり、魚にとっては回遊したい場所になります。
上げ潮と下げ潮では、ねらい場所が異なる場合が多いものです。潮にのって回遊する魚は、とくに変わってくるので注意しましょう。
潮流のある所すべてがポイントではありません。
上げの潮ははなれ、下げの潮はヘチを伝わる動きが内側・外側の潮通しは、サラシも生じて単調な堤防釣りのポイントとして一級です。
くの字状に曲がる地点は潮が変化していますから、ねらう価値があります。
河口付近は、対象魚によって異なりますが、汽水域に入る魚にはうってつけの場所で、ときには流れ込む川の水の濁りが幸いすることもあります。
流れ込む水もそうですが、潮温(水温)の高低も、濁りには重要な要素をもっています。
上げ潮と下げ潮の関係
上げ潮と下げ潮では、ねらい場所が異なる場合が多いものです。潮にのって回遊する魚は、とくに変わってくるので注意しましょう。
潮流のある所すべてがポイントではありません。
上げの潮ははなれ、下げの潮はヘチを伝わる動きが大といわれます。
魚の習性でポイントをつかむ
堤防釣りでは、シーズンにもよりますが、多彩な魚が釣れるものです。本命以外の魚を釣っては意味がありません。また、底層魚をねらってその仲間が釣れるのは避けられませんが、中層魚をねらって底層魚が釣れるのは問題です。釣り方そのものにまちがいがあるか、習性を知らないためにおこるかのいずれかです。習性をよく知って、釣るポイントをつかみましょう。
大別すると、
●上層、中層、下層のどの泳層を泳いでいるか
●砂底(底層)をすみかにしているか
●移動性の激しい魚かどうか
などの習性を知っておくことが大切です。
たとえば、クロダイが砂にもぐったり、サヨリやキス、イワシなどが岩の上に乗っていることはあり得ませんから、そこをねらってもむだです。
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