1.魚には、釣りやすい魚と釣りにくい魚がある。釣りやすい魚の代表は、ハゼやワカサギ、アジなど。
いっぽう、釣りにくい魚にはクロダイ(チヌ)やイワナなどがあげられる。クロダイもイワナも警戒心が強く、そう簡単には釣り針にはかからない。
いっぽう、警戒心のゆるい魚ほど、エサにひっかかりやすいというわけだ。
また、同じ種類の魚にも、釣りにくい魚と釣りやすい魚がある。同じ種であっても、危険を察知する能力などの違いから、すぐに釣られてしまう魚とそうでない魚がいるのだ。
これは、魚の放流後の現象からわかってきたことだ。
たとえば、川にアユを放流して釣りはじめると、最初のうちはよく釣れるのだが、しだいに釣れなくなっていく。川には、まだまだけっこうな数のアユがいるのに、そのアユたちは釣り針にひっかかってくれないのだ。 つまり、アユの資源量はさほど低下していないのに、アユの釣獲量のほうは、一気に低下していくのだ。
この現象を解釈するとき、次のような仮説が考えられる。最初に危険察知能力の低いアユが次々とひっかかり、危険察知能力の低いアユは淘汰される。残ったのは、
危険察知能力の高いアユたちで、彼らはやすやすとは釣り針にひっかからない。そのため、アユがいるのに、釣れないという現象が起きるというわけだ。
仲間が釣られているのに逃げない
釣りの風景を見ていて不思議に思うのは、仲間が釣られているのに、周囲の魚が逃げようとしないことだ。たとえば、アフリカの草原で、シマウマの群れは、ライオンに襲われるといっせいに逃げ出す。
ところが、魚の場合、逃げないどころか、入れ食い状態になることもある。東京湾のハゼなど、シーズンになると、釣り竿を 海に入れるだけで、食いついてくる。そんな仲間の悲劇を間近にしているのに、また別のハゼが食いつく。
また、釣りには絶好のポイントがある。そこへ行けば、必ず釣れるという場所だ。 そこは、魚からすれば、絶対に行ってはならない危険ポイントのはずだが、平気でやってきては釣られている。
もし、人間が魚だったら、″魔の海域″などと称して、そんな場所には誰も近づかないはずである。 仲間が釣られているのに、魚が逃げないのは、要するに魚にはそこまでの頭がないから。
魚の脳は、ヒトや哺乳類とくらべてはるかに小さい。
記憶容量はひじょうに小さく、すぐ前にあったことも覚えていないのだ。 たしかに、仲間が釣られた瞬間、魚は危険を感じて、少し遠くに逃げるのだが、1分もたたないうちに、そのことを忘れてしまっている。
だから、また釣り糸が垂れている周辺に戻ってきて、平気で泳ぐということになるのだ。
魚は、目先のこと、つまりエサを食べることにしか、ほとんど関心がない。そのため、仲間が釣られた場所に平気で戻ってきて、自分も釣られることになるのだ。
2.朝と夕方に釣れる理由
朝と夕方は、釣りにはベストの時間帯。朝と夕方、魚がよく釣れるのには、ちゃんとした理由がある。 海中には、プランクトンと呼ばれる微小サイズの浮遊生物が数多くいる。プランクトンは、動物プランクトンと植物プランクトンに大別でき、植物プランクトンは動物プランクトンのエサにもなっている。
その植物プランクトンが多くいるのは、海の浅い部分だ。植物プランクトンは光合成をおこなっているので、太陽の光が差し込んでくる水深100メートル以内でないと棲息できない。
いっぽう、動物プランクトンは光を嫌い、日中は水深200から300メートルまで潜っている。そして、太陽光線が弱まる夕方になると、水面近くまで浮上し、植物プランクトンを捕食し始める。
すると、
浮上した動物プランクトンを捕食しようと、小魚も海面近くに寄ってくる。さらには、その小魚を狙う中型魚が現れ、中型魚を追いかけて大型魚も現れる。
というわけで、夕方は、海面近くにはさまざまな魚が行き交い、釣り針にひっかかりやすい状態となるのだ。
その状態は朝までつづき、朝、太陽が昇りだすと、動物プランクトンは光を嫌って海中深く潜ってしまう。すると小魚らも、しだいに浅い部分からいなくなっていく。 それでも朝、太陽光線の弱い時間帯は、まだ多数の魚が浅いところに残っているので、朝もまた釣りどきになるのだ。
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