1.スキューバダイビングの醍醐味のひとつに、「海の中で魚と目が合う」楽しさが あるという。要は、目が合うほどの至近距離で魚と触れ合える、というわけだ。
たしかに、海の中で魚と目が合えば、その生き生きした姿に新鮮な感動を覚えるに違いない。
しかし、いっぽうでこんな疑問もわく。魚のほうは、人間の姿をちゃんと目で確認しているのだろうか。魚は、水中を進むとき、頭を左右に振り、体全体をヒレのように使って泳いでいる。
もし人間が頭を振りながら歩いたり走ったりしたら、物体を認識するどころではない。 しかし、魚の場合、
敵が近づけば、素早く逃げるところからも、頭を振りながら泳いでも、周りのものがよく見えていることがわかる。
そこで、こんな実験がおこなわれた。ニジマスの角膜に極小のカメラを設置して、その目の動きを調べるというものだ。 その結果、ニジマスの目は、体の動きとは関係なく、ほぼ一定の方向を向いていることがわかった。
ニジマスは、1秒間に頭を2、3回の頻度で、左右に12~20度という角度で振りながら泳ぐのだが、その動きにもブレることなく、ものを注視できるのである。
また、頭の向きが変化したときの眼球の回転速度も優れている。
ニジマスは1秒間に580度、オオクチバスでは900度も回転する。つまり、頭をどんなに振っていても、あらゆる角度から視覚情報を得られるわけで、見えるものが敵か、それともエサなのか、魚は瞬時に判断できるのである。
ただし、ものがクッキリ見えるかどうかということになりますが、、、
魚の目と人間の目の最大の違いはその視野にあります。
人間の目が顔の正面にあり体より後方は死角になるのに対し、魚の場合は魚体の真後ろ以外はほとんど死角はありません。
死角が無い代わりに両眼視野の範囲も少なくなり、距離感がつかみにくくなるという訳です。
視力そのものは、0.1~0.5程度と、人間でいえば近視の部類です。
カメラ用のレンズで魚眼レンズなどといわれるものがありますが、あのように見えているのでしょう。
海の中は空気中とくらべれば透明度は低く、視界はよくないので、どこまで判別できるか不明です。
魚にはそれをカバーする感覚器官が備わっているため、その程度の視力の低さは障害にはならないのだ。
伊豆や房総の海に熱帯魚がいるのは赤や黄色やストライプ模様が鮮やかなトロピカルフィッシュ。
ダイバーたちは、色とりどりの熱帯魚を見るために、飛行機に乗ってはるばる南の海へと旅立っていく。 ところが、本来は沖縄や小笠原など、南の海にしか棲まないはずの熱帯魚が、夏の本州の海でも泳いでいることがある。
たとえば、5本のシマシマ模様がついたオヤビッチャの幼魚や、背ビレの長い棘をヒラヒラさせて泳ぐツノダシの幼魚、水玉模様が目印のモンガラカワハギの幼魚などである。
彼らは、南から黒潮に運ばれてやってきた熱帯魚の子どもたち。
紀伊半島、伊豆半島、房総半島の近海など太平洋側に多く見られるが、それはちょうど黒潮がぶつかる半島部という立地のせいである。
それにしても、伊豆や房総の海に熱帯魚がいるのなら、ダイバーはわざわざ南国の海に潜りに行く必要はないではないか、とも思えるのだが、じつは熱帯魚の子どもたちは、長くは生きられない。彼らは、たまたま黒潮の流れに乗って泳いできてしまっただけで、夏場に太平洋側の半島にたどり着いたら最後、生まれ故郷の暖かい海へ帰ることはできないのである。
熱帯性や亜熱帯性の幼魚は、もともと長い距離を泳ぎまわる回遊魚ではない。したがって、水温の下がる秋や冬になるころには、多くの幼魚は死んでしまうのである。
もっとも、なかには南国生まれのわりにたくましいのもいて、冬まで成長を続ける魚もいることはいるが、繁殖までには至らない。熱帯魚もできることなら南の海へ帰りたいだろうが、そこは自然界の厳しさ。冷たい海で一生を終える運命にある。
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