1.釣りができる温泉(近畿・中国)
陽光明かるい南紀の温泉、そして熊野山中から十津川の秘湯。歓楽的色彩の濃い大温泉もあれば、素朴な山里のいで湯もあって、プレイスポット、歴史など各々個性も豊か。豪快な磯釣りからのどかな川釣りまで釣りもレパートリー多彩。
中国地方も歴史と情緒豊かな温泉がいっぱい。魚影抜群の日本海で釣って、いで湯にしっぽり包まれる
勝浦温泉 和歌山県 那智勝浦
勝浦温泉は白浜温泉とともにその名を全国に知られる南紀を代表する温泉。
勝浦湾口に点在する大小130の島は吉野熊野国立公園きっての名勝で紀ノ松島と呼ばれ、その中の山成島は本曽義仲に敗れた平維盛が入水して命を絶ったところと伝わっている。
温泉は勝浦湾の東側に伸びる狼煙山の半島、中ノ島、それに那智湾側にそれぞれ泉質のちがう湯が湧き、豪華な旅館が建っている。半島や中ノ島の旅館はそれぞれ専用の送迎船を持っていて、これに揺られて宿に向かう特異な風景が見られる。
勝浦温泉で有名なのが浦島温泉ヴィレッジホテル浦島の大洞窟風呂「忘帰洞」。
熊野灘に向かって開く広さ約1000が、高さ22mの洞窟風呂で、紀州藩主徳川頼倫がこの湯につかりながら景色に見とれて帰るのを忘れたところから忘帰洞の名がついた。旅館は約25軒。設備の整った高層・豪華なものが多く、なかには収容2000人を超えるホテルもあるが、春から秋のシーズンは満員になるので予約は早めにする。
釣り
平維盛が入水したと伝わる紀ノ松島の山成群島は釣り場としては南紀屈指の好ポイント。
魚はイシダイ、メジナ(グレ)、ブダイ(イガミ)、イズスミ、クエ(モロコ)で、イシダイは盛夏~初冬、メジナ、ブダイは初秋~冬、クエは秋~冬が最盛期。
一般的には秋から冬の釣り場で、ここのよいところは沖が荒れて釣りにならない時は湾内の磯に逃げられること。
渡船は各旅館で紹介してくれる。
白浜温泉 和歌山県 白浜
古くは万葉集や日本書紀に出てくる白浜温泉は熱海。別府と並ぶ日本三大温泉のひとつ。
白浜地区、その西南の湯崎地区、田辺湾に面する東白浜、綱不知、新白浜地区などに分かれ、これらを総称して白浜温泉と呼んでいる。約60軒の温泉旅館は近代設備の規模の大きなものが多く、収容能力は2万人を超える。
飲食店約180軒、芸妓約250人。
陽が沈むと三味線の音が流れ、ヌード劇場に酔客を運ぶマイクロバスがいそがしく動きだす。男神、女神の結合像を集める白浜美術館も含めて歓楽的色彩が濃い。
温泉は約100本の源泉があるが、使用されているのは約20本。
無色透明のアルカリ泉でリューマチ、胃腸病、婦人病に効き、湯量は豊富。
共同湯も数か所にあって、かつて湯崎七湯といわれた崎ノ湯は海に面して露天風呂となって残っている。
賑やかな温泉ムードを好むなら白浜地区、湯崎地区で、柳橋通りや御幸通りにはバーやスナック、小料理店が集まっている。
釣り
田辺から白浜温泉にかけての田辺湾は風波に強くて常に静か。
そのためハマチ、マダイ、ヒラメなどの養殖が盛んで、その周りに魚が集まる。
これを狙って例年4~12月には各漁協の釣り屋形が設けられ、家族連れからベテラン、団体まで幅広い層の客を集めている。
釣り魚はキス、ウミタナゴ、ボラ、アイゴ、マダイ、チヌなどで、網から逃げたハマチやヒラメも混ざるのだからおもしろい。
投げ釣りなら東白浜のフェリー桟橋付近がおもしろい。
キス、ノドクサリ、小ダイが釣れ、夜釣りならアナゴも釣れる。キスは冬でも船道を狙えば数釣りができ、ウキ釣りならボラやクロダイもでる。
磯釣りは地磯なら千畳敷が入りやすい。
沖磯ではないので大きな釣果は望めないが、波気が少しある日の朝夕はキロ以上のメジナが釣れる。
ただしここは磯自体は広いが傾斜がなだらかなので、海が荒れてくると波が這い上がるので注意が必要。
沖磯は臨海沖の四双島、ビシャゴ、大ジュブ、大グソ。
狙いはメジナで、クロダイ、ボラ、カサゴなどもでる。
渡船は田辺から。
川湯温泉 和歌山県本宮
川湯温泉は熊野本宮大社の南約3km、十津川の支流大塔川畔に湧いていて、5軒の旅館が建ち並ぶ前の河原約500mの間を掘ればどこでも熱い湯が湧きだしてくるユニークな温泉。
どの旅館にも内湯はあるが、湯客の関心はやはり河原の露天風呂にいく。
ただ河原は車道に平行しているので、日中の女性の入浴は覚悟がいる。
そんな時は専用の湯舟を作るのをあきらめて川湯名物の千人風呂に入るか、宿で浴衣を借りればいい。
川湯温泉は静養、家族連れにピッタリの温泉である。
夏は水遊びができ、川で泳いで体が冷えたら河原を掘って暖まればいい。
5月を過ぎるとホタルが飛び、カジカが鳴く。
ここにきたらぜひ訪れたいのが川湯から3kmほど離れた湯ノ谷川畔に湧く湯ノ峰温泉である。日本最古の温泉として知られ、平安時代にはすでに熊野詣の湯垢離場として名を馳せていたという。ここは歌舞伎でもおなじみの小栗判官と照手姫の伝説にちなむ温泉で、判官が入浴して蘇生したつぼ湯は共同湯に隣接してあり、温泉熱で卵や野菜をゆでる湯筒も体験できる。
釣り
大塔川の川湯温泉付近は温泉が混ざるので水温が高めである。そのためこの地方でイダと呼ぶウダイ(ハヤ)が一年中釣れ、冬も入れ食い状態である。仕かけは小さなオモリだけのミャク釣り仕かけで、エサはサシ、ミミズに昆虫の幼虫なら何でもOK。また10km上流大塔渓谷はアユ、アマゴの釣り場。
十津川温泉 奈良県吉野郡
和歌山県と奈良県の県境にある十津川村は奈良県の5分の1を占める大きな村で、R68が奈良県の五条と和歌山県の新宮を結んでいる。
集落はR68と平行して流れる十津川沿いに点在し、十津川と十津川に注ぐ沢を渡るために吊り橋が多く、野猿もある。
村の南部、十津川上流部の二津野ダム湖畔平谷にあるのが十津川温泉。
約10軒の旅館と民宿が山里独特ののんびりとした温泉街を作ってのどかな雰囲気である。
温泉は文禄年間(1688~1704)に炭焼人夫が発見した十津川支流上湯川に湧く下湯温泉からの引湯。下湯温泉は十津川の温泉街から約2.5km離れたところにあって、古くからの露天風呂を持つ宿が1軒。
下湯からさらに2.5km上流にはこれも旅館が1軒の上湯がある。川の流れに手がとどく位置に素朴な露天風呂があって、秘湯の感が強い。
釣り
温泉街が沿う二津野ダムは交通の便があまりよくないので、釣り場が荒されておらず、魚がすれていないのがいい。
棲息する魚はコイ、フナ、ウグイ、ワカサギ、それにブラックバスで、全ての魚に好漁が見込める。ただ、ボートの持ち込みが禁止なので、釣りは陸からになる。
全ての魚に通じるポイントは平谷バス停前のワンドと流れ込み、それに西川との合流点など。
バスはスピナーベイト、ミノープラグが効果的で、ウグイはサシ、マブナはアカムシが効果的。浴衣がけもOKの釣り場である。
洲本温泉 兵庫県淡路島
イザナギ、イザナミの国主み神話でおのころ島と呼ばれた淡路島は、明石海峡と紀淡海峡で本州と隔り、鳴門海峡を中にして四国と向き合っている。
気候は温暖で、超目玉の鳴門渦潮を筆頭に景勝や史跡に恵まれ、由良、洲本、志筑、岩屋へフェリーや客船が絶え間なく出入りし、さらに鳴門大橋で四国とつながって、年間を通して訪れる人が多い。
島の中心は洲本。
徳島藩の城代稲田氏6万石の城下町として発展してきたところで、現在は海陸の交通の中心。この洲本の海岸線に湧くのが洲本温泉。
旅館約15軒で背後に全山公園の三熊山がそびえ、明るい感じがあふれている。
釣り
全島いたるところから竿をだせる淡路島は阪神方面の釣り人にはおなじみの投げ釣りの砂浜もあるが、大半が波止の釣り場で、磯釣りのポイントはほとんどない。
〔洲本港〕 洲本港は左右の赤灯と自灯の波止が主な釣り場。
赤灯波止は外側にテトラがびっしり入っていて、その際を竿釣りで狙う。
魚はメバル、ガシラ、アブラメ、それにサビキ釣りのアジ、サバだが、ポラの団子釣りとギャング釣りもおもしろい。特に団子釣りは大量に寄せエサが散るので、これにクロダイが寄って一発がある。
〔古茂田〕洲本から少し由良方面にいった古茂田は五目釣りがおもしろい。
狙いはテトラが入っていて水深も十分な埋めたて地の南端。
あまり大型はこないので、仕かけはハリス0.8号、袖バリ6号が目安で、エサは寄せエサともシラサエビ。魚はメジナ、クロダイ、メバル、アジなど。
〔大磯港〕 山石屋に近い大磯港は交通の便がいいうえに釣魚が多彩で、常に釣り人で賑わっている釣り場。
港入口左右にある灯台付近の外側がポイントで、メジナ、クロダイ、メバル、アイナメ、それに穴釣りでカサゴが釣れる。投げ釣りは船道のカレイが狙いだ。
〔谷山ダム〕大磯港から楠本川に沿って車で5分ほどいったところにあるダムで、ここでブラックバスが釣れる。サイズは30~35cmだが、なにしろ数がでる。
ルアーはスピナーベイト、ワーム、グラブなど。また、谷山ダム横の上池にもバスがいるので狙うとおもしろい。
玉造温泉 島根県・玉湯町
湖水に落ちる夕日の美しさで知られる宍道湖は斐伊川が流入し、大橋川と天神川によって中海へ、そして佐陀川によって本海に抜ける汽水湖で、淡水の魚と海の魚が同居しており、この魚介の味覚を宍道湖の七珍という。
これは4~11月のシジミ、ウナギ、10~3月のスズキ、コイ、11~3月のアマサギ、12~7月のモログエビで、スズキの奉書焼き、コイの生造りなど独特の料理法をつくりだしている。
湖の東端にクロマツを茂らせて浮かぶ嫁ガ島には姑にいじめられた嫁が投身自殺をした時、見ていた神が嫁を乗せて浮上したという伝説を持っている。
湖畔にはテニス、バレーボール、スケートなどができる平田市立宍道湖公園遊館があり、定期遊覧船による湖上巡りもできる。
宍道湖から玉湯川を約1.5km逆登ったところに湧く玉造温泉は三朝、皆生と並ぶ山陰を代表する温泉。
温泉街は桜の本が立ち並ぶ玉湯川をはさみ、趣向を凝らした庭や露天風呂を持つ旅館の間に飲食店やみやげ物店が並び、湯の町情緒があふれている。
旅館数約20軒で、客層は広い。
釣り
ブナ、ワカサギ、ハゼ、セイゴ、チヌと淡水。
海水混ざっての五目釣りになる。
境水道は裏と呼ばれる日本海側がよく、初夏からキス、アプラメが釣れ、夜釣りのスズキもおもしろい。カレイの接岸は11月に入って他にメバル、ハゼ、クロダイも釣れる。
湯原温泉 岡山県湯原町
湯原温泉は蒜山高原を源とする旭川畔に湧く、美作三湯のひとつ。
美作三湯とは津山市の東南約15kmの吉井川沿いに湧く湯郷温泉と、山深いために熊などがでやすく、これを警戒するために吉井川のほとりに湧き出す湯を使っての足踏み洗潅で有名な奥津温泉の2つを合わせていう。
湯原温泉は旭川をせき止めた湯原ダムのすぐ下、三方を山に囲まれた谷底に湧く温泉で、旭川の両岸から迫る崖にすがりつくようにデラックスな旅館やホテルが建ち並び、しっとりとした山の温泉の雰囲気と華いだ歓楽的匂いが同居して漂っている。
ここの名物は巨大なダムのすぐ下にある露天風呂。
立派な石で囲った湯舟が河原にいくつもあって、昼間から土地の人やドライバー、滞在客が入りにくるが、賑わう場所だけに若い女性は夜にならないと無理。
旅館は約30軒。設備のよい近代的なものがほとんどで、他に国民宿合桃季荘、湯原憩の家、
それに労働福祉事業団の湯原荘がある。
ダム下名物の露天風呂・砂湯の下流100m旭川畔に、土地の人が利用する素朴な野天の湯がある。瀬となって流れる旭川はここでトロ状になるが、このトロのカケアガリが狙い目になる。
ウダイなら入れ食いもあるし、アマゴもいる。
このトロから釣り始めて、上流の砂湯までじっくりと探り、釣り終えたらメジナガエルの声を聞きながら露天風呂なんてもう最高
湯本温泉 山口県長門
長門湯本温泉は長門市の南方、長門湯本駅の東側、音信川両岸に設備の整った約20軒の旅館が温泉街を作っていて、秋吉台、萩観光に欠かすことのできない温泉。
並び建った旅館にかくれて昔ながらの恩湯。
礼湯の共同湯があって、歓楽的色彩が濃いなかにしっとりとした温泉情緒も残っている。
近くには重臣陶晴賢の反乱で大内氏31代。大内義隆が逃げ込んだため戦乱の舞台になった大寧寺や萩焼きの深川窯元がある。
湯本温泉は秋吉台にも30km以内の距離にある。
秋吉台は石灰岩高原で日本最大のカルスト台地で、南山麓地下には石灰洞の秋芳洞がある。
萩は毛利氏36万9000石の城下町。
武家屋敷や土蔵の家、そして明治維新を偲ばせる多くの史跡が歴史ファンの胸をときめかせる。
秋吉台や萩よりもさらに近いのが仙崎の先端に浮かぶ青海島。
日本海の荒波によってできた奇岩洞窟の連続で、仙崎とは青海大橋で結ばれ、遊覧船もこの
橋の棧橋から出ている。
釣り
海釣りでは青海島の磯釣りも魅力だが、より気をひかれるのが油谷湾のイカダのチヌ(クロダイ)釣り。
関西に見られる本格的なイカダはなく、全てハマチの養殖イカダに簡単な板を渡たしてあるだけなので足場が狭い。
釣り場は久津と大浦の2か所に分かれていて、業者は自分の所有するイカダに釣り人を渡すシステム。
養殖イカダがあるだけに潮の流れがゆるやかで水深も10m以上ある。かかり釣りにピッタリの条件で、それだけ数釣りはできるし、50cmオーバーも多く、時には60cm以上も釣れる。
釣期はほぼ周年だが、大型は年未から3月ぐらいまでと5月の連体から6月いっぱいで、数釣りは6月と初秋がピーク。
竿は1.8m、道系・ハリス通しの2~3号でチヌバリ5号が仕かけの目安だが、大物にしぼるなら2~3号の中通しオモリを使ったぶっ込み仕かけもいい。
エサのダンゴは赤土が禁止なので注意。
ブラックバスならJR美弥線の美弥駅に近い美弥ダムを狙う。
50cmオーバーのスクールも見かける魅力の釣り場だが、陸釣りは東側からだけに限られるので、ボートを持ち込めれば最高。
ポイントは立ち木、岬、ワンド、ゴミの溜りなど。
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