1.釣りができる温泉(東北)
東北は温泉街を作って湯の町情緒がうれしい温泉も多いが、よりみちのくらしさが感じられるのは山里でひっそりと湯けむりを上げる素朴な1軒宿のいで湯。
泉質がよくて混浴が多く、こんな宿では大体は川魚と山菜の料理がうまい。
釣りはクロダイが魅力だが、これは海とうまくからまない。やはり渓流のイワナ、ヤマメで、ブラックバスがいる湖もある。
下風呂温泉 青森県下北半島
津軽海峡に斧のような形で突き出た下北半島。
本州最北の地で冬の厳しさは思いやられるが、なにか胸をかきむしられるような旅情が迫るところである。
大間崎はその最先端で、北海道までわずか20kmの距離にあり、函館山を望んで「本州最北端の地」と刻んだ石碑が立っている。
海に面して小さなドライブインがあった。
コーヒーを飲んでいると、甲府から来たお客さんがくれたというブドウを分けてくれた。
大間崎からR279を30kmほどもどった海岸沿いにあるのが、最北のいで湯として人気が高い下風呂温泉。
「バスが下風呂部落へ着いた時は五時を廻っていた。一番構えの大きい旅館の前が停留所だった。」
これは井上靖が下風呂温泉に滞在して渡り鳥を追う男をテーマに書いた『海峡』の一節で、執筆した旅館は玄関上に「海峡の宿「長長谷旅館」と看板をかかげてバス停前にあった。
素朴な温泉街に旅館15軒と民宿17軒。
大湯と新湯の2か所から湧出する湯はなめると塩辛く、白濁していていかにも体に効きそう。
イカ、ウニ、アワビなど海の幸も豊富で、夏から秋にかけては間にきらめく漁火がロマンチックである。
釣り
手近な釣り場は下風呂漁港。投げ釣りでソイ、アプラメ、ヵレイが釣れ、群れがまわればチカの大釣りがある。
足を延ばせば大間崎がおもしろい。ポイントは灯台が立つ弁天島周囲で、魚は下風呂と同じ。
浅虫温泉 青森県青森
鎌倉時代に発見され、藩政時代には津軽藩士も湯治に訪れている浅虫温泉は、歴史の古さでは東北有数の温泉である。
三方を山に囲まれ、残る一方を夏泊半島のつけ根にあたる陸奥湾に面したロケーションは抜群で、温泉街は新旧国道沿いと山裾に密集している。昔から歓楽温泉として有名で、総数約50軒の旅館・ホテルは海側に近代的設備の大規模なホテル、山側に小規模だが風情のある旅館が集まっている。
浅虫温泉の右端から下北半島と津軽半島の中間、陸奥湾のほぼ中央に突き出しているのが夏泊半島。
面積の大半を標高200m前後の山地が占め、集落は海岸線に集中して漁村を作っている。
近くの八甲田山が吹雪いている時も、ここはポカポカとした小春日和。夏泊半島はそんなのどかな、小さな半島である。
釣り
釣趣があるのは夏泊半島に点在する各漁村の堤防釣り。しっかり釣れば40cmオーバーのクロダイも夢ではないが、趣があるのは両側に延びる津軽半島と下北半島を見ながらのんびり楽しむ小物釣り。ポイントは港内。
どの堤防も水深があるが底まで見とおせて、のぞいても魚の姿がまったく見当たらない。
ところが、冷凍アミの寄せエサをまくとたちまち、どこかから魚がわいてくる。
イワシ、ウミタナゴは常連で、サヨリやホッケもまわる。堤防外洋側はクロダイ、それに投げでカレイやカジカが釣れる。
浴衣がけの釣りなら有料だが浅虫海釣り公園が近い。貸竿、エサ常備で、タイやイナダが釣れるから豪勢だ。
竜飛崎温泉 青森県津軽半島
森繁久爾、高倉健、吉永小百合共演の「海峡」は青函トンネルの難工事をテーマにした映画で、最北の地竜飛の厳しい自然と吉永が演ずる女性の純愛に感動したものである。
北緯41度15分。北海道の白神崎と津軽海峡をへだててわずか20kmに向かい合う竜飛崎は先端に竜飛灯台を立てて標高約100m。
足下は険しい断崖が海に落ち、波が磯にくだけて足がすくむ景観を見せる。その横にある漁村は大宰治に「ここは本州の極地である。この部落を過ぎて路はない」といわせた集落である。
ここは風の岬である。
特に灯台付近の風は超強く、這わないと歩けないほどである。
竜飛崎温泉は灯台から徒歩約10分のところにあって、宿はホテル竜飛ただ1軒。
平成2年夏に天皇・皇后が昼食休憩されたところで、ここの漁介料理はなにしろ美味である。
釣り
竜飛は50cmオーバーのクロダイが釣れる最果ての釣場で、外道に40cmクロマスのマダイがくるのだからすごい。
釣り場は三厩と竜飛の中間にある上宇鉄漁港にしぼろう。ここは漁港先端に浮かぶミサゴ島がクロダイのA級ポイントとして知られたところだが、現在はアワビの養殖のために立入禁止になってしまった。したがって釣りは堤防からになる。狙いは堤防入日の護岸と火たき岩の手前。両者とも水深は4~5mで、釣りはテトラの上からになるので足元には要注意。
堤防入口は手前テトラ際から沖まで広く探り、魚がかかったらテトラに潜られないように注意が必要。火たき岩手前はテトラの際を主に狙う。
蔦温泉 青森県八甲田
十和田湖は八甲田山麓の南、青森と秋田の県境の山の上にできたカルデラ湖で、標高約400m。最高水深327mの湖は青く澄み、透明度は約15m。
八幡平、八甲田と合わせて東北観光の超目玉で、現在年間約300万人の観光客が訪れる。
観光の中心は観光船が発着し、バスが集中する休屋。観光桟橋を中心にみやげ物の店や食堂が建ち並び、博物館や水族館もある。
前の御前ガ浜に立つのは十和田湖のシンボルといえる高村光太郎の「湖畔の乙女像」。
子の日から発する奥入瀬川は十和田湖から流出する唯一の河川で、特に子の日から焼山までの14kmは千変万化の渓谷美を見せて特別名勝、天然記念物に指定されている。
春の新緑、秋の紅葉は美しく、渓畔につけられた遊歩道は歩いて観賞する人であふれかえる。
焼山から八甲田山中を酸ケ湯方面に分け入った標高480mに湧くのが蔦温泉。ここは美文で知られる詩人で文学者、大町桂月が愛した温泉で、桂月は大正2年にここで歿し、敷地内には歌碑と墓がある。
湯船の底の板の間から湧きだす温泉は肌に心地よく、婦人病、胃腸病に効く。
釣り
温泉近くでは蔦川と蔦沼が狙い。蔦川は猿倉あたりまでがよく、大型のイワナが見込める。一鳥沼はニジマスとイワナが釣れるが、有料。足を延ばせば十和田湖もいい。
有機物が少なくて全く魚が棲まなかった十和田湖だが、明治中期に和井内貞行がヒメマスを放流して以来棲息する魚がふえ、現在はヒメマスを中心にトラウト類がボートで釣られている。
瀬見温泉 山形県 最上町
東北自動車道を古川ICで降りてR47を走ると約30kmで鳴子温泉に入る。
ここは飯坂温泉、秋保温泉と並ぶ奥羽三名湯のひとつで、こけしの里として有名。
駅前にこけし型の電話ボックスがあって、温泉街にこけしの工人の店が目立つ。
鳴子こけしは胴が太くて首をまわすとキイキイ音をだすのが特徴。
鳴子峡に近い高台には全国から集められた約5000本のこけしを展示する日本こけし館がある。
さらにR47を約30km、陸羽東線瀬見駅の南1kmにあたる小国川に沿って湯けむりをあげるのが瀬見温泉である。
ここは義経に従って平泉へ落ちる途中に弁慶が見つけたと伝えられる温泉で、義経の北の方が産んだ亀若丸の産湯に使われたという。
旅館は15軒。小国川畔には瀬見温泉で最も規模が大きい瀬見グランドホテル観松館が建ち、その裏に中小の湯治宿が並ぶ。湯量豊富な温泉は痔疾に効能があって、温泉街には共同浴場が2つとふかし湯がある。
釣り
アユ釣りで知られる小国川だが、ここはカジカが多い川。あまり釣り場がない魚だけにカジカを狙っての出漁もおもしろい。
仕かけはミチイト1号、ハリス0.8号、ソデバリ6号のミャク釣り仕かけで、エサは川ムシ、アカムシ、それに釣ったカジカの卵。
ポイントは温泉付近全般だが、流れのゆるいところや渕にはいない。
流れの速い玉石の際が狙いで、30cmくらいの大きさの玉石を探がして釣る。
土湯温泉 福島県 吾妻
明治21年(1888)の磐悌山の大噴火でできた磐悌高原は檜原。秋元。小野川の3湖や五色沼など大小300の湖沼を散らす美しい高原。
春は水芭蕉と新緑で始まって、夏は花々が咲き競い、秋は紅葉。
ここは小鳥の宝庫で、さえずりはハイキングやキャンプ、サイクリングのBGMに欠かせない。
そして冬はスキーで賑わう。
高原にはおしゃれなペンションをはじめ、公営宿合、民宿約100軒があって、さらに素朴な1軒宿の温泉から湯の町情緒豊かな温泉まで、いろいろある。
吾妻小富士東南麓標高435mの渓谷沿いに約30軒の旅館が建ち並ぶ土湯温泉も磐悌。吾妻観光の基地として賑わう温泉のひとつ。
ここは聖徳太子の命を受けて周辺を巡行した秦河勝が見つけた温泉として伝えられるのだから歴史は古く、以前は湯治客で販わっていたが、現在は旅館が近代化されて湯治湯の雰囲気はない。
付近には水芭蕉の咲く仁田沼や男沼。女沼があり、土湯こけしの故郷でもある。
釣り
付近の渓流はイワナの玉庫だが、ここ3湖はいずれも豊富な魚種を誇り、棲息する主な魚はイワナ、ニジマス、サクラマス、ヤマメ、ヘラブナ、コイ、ワカサギ、ウグイで、これに数年前からブラックバスが仲間入りした。
〔檜原湖〕 檜原3湖の中では最大で、南北約9km、東西2.5km、最深部31m。湖岸は複雑に屈曲し、湖南は島が多く、水の透明度は抜群。
ポイントはほぼ全湖にわたり、貸ボートもあるのでベストフィッシングにはここを利用する。ただ、夏期の湖南は観光客が多いので、こんな時は北側の本村方面に逃げる。
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