1.防波堤の役割と種類
船舶が安全に停泊できる場所が港で、港を波、風、砂、潮流などの影響から守ったり、港を使いやすくするのが港湾施設だ。この港湾施設が防波堤であり消波堤、防砂堤、防潮堤、埠頭、桟橋なのだ。そしてこれらの場所での釣りを総称して防波堤釣りとよんでいる。

たとえば東京湾のように巨大な港は、大河川の河口部につくられたものが多いこともあり、外洋の影響をほとんど受けない。そのため、汽水域にも生息できる魚(スズキ、ハゼ、クロダイなど)の釣り場となることが多い。

いっぽう、全国に3000近くあるという漁港を守る防波堤は、けっこう外洋の影響を受けるので、回遊魚もふくめた多くの魚が釣りの対象になる。反面、海が荒れていると危険度も高くなる。こういった日は外洋の魚も湾内に避難してくる。港は船舶を守るだけでなく、魚たちにとっても理想的な避難場所になるのだ。

構造
防波堤は波、風、砂、潮流といった外洋の影響を防ぐためにあるのだから、配置や強度に工夫がこらされている。外洋の影響をはげしく受ける場所では、二段構えの防波堤をつくり、外側が純粋に波を防ぐ役割をもち、内側の港に船を停泊させるものもある。

これらの防波堤は海底の状態や用途によってさまざまな構造をもっている。代表的なものには、捨て石やコンクリートブロックで土台をつくり、その上に平面部分をのせた傾斜防波堤と、切り石やコンクリートブロック(ケーソン)を組み上げた直立防波堤、この2つを組み合わせ、しっかりした土台をつくり、その上に直立防波堤を組み上げた混成防波堤がある。外洋に面した場所ではテトラポットなど消波ブロックが配置されている。

いずれにしても防波堤のまわりには、自然の状態ではできるはずのない環境の変化がうまれ、生物たちのすみやすい場所をつくることになるのだ。

2.防波堤の種類と構造
名称は違っても役割は同じこと
文字どおり、港を荒波から守るために作られているのが防波堤の役目です。
ひとくちに防波堤といっても、目的によっては形も設置位置も変わり、さまざまです。
陸地に近い部分や河口などにある岸壁は、防波堤とはいわずに導流堤、または単に堤防と呼んでいます。

沖に目を移すとここにも防波堤(沖堤)があります。台風などで沖が荒れているときに、沖堤の内側を船が航行したり、避難したりするなどの役目を果たしています。もちろん陸地にある港も保護します。

消波ブロック
防波堤とは異りますが、同じような役目をするのが消波ブロックです。浸食を防止する目的もかねています。

消波ブロックは、外洋に面した波が防波堤に直接突き当たるので、堤防を守るために入れられています。コンクリート製で、一見すると星形や三角形をしていますが、巨岩を用いる場合もあります。

かなめ
防波堤は産業、漁業の要である港をかこんで作られているので、海の基地のシンボルといってよいでしょう。

なぎさ
渚を埋め立てて造成されることが多いコンビナートなどは、主に砂上の港といえます。
一方、漁村によく見られる、山川部から面接海にのびる瑞礁や岩盤を利用した港は、合理的な構造物といえます。


住み分け
外洋に面した防波堤
外洋に点在する離島の防波堤は、湾内のものよりがんじょうに作られている。
こういった場所は、急に深く(急深のカケアガリ)なっていることが多く、防波堤の先端部はそうとう深くなっている。

外洋に面しているだけに、潮流の影響が大きく、魚の種類も豊富で、本格的な釣り場となる。特筆すべきは、秋から冬にかけて回遊してくるイナダ(ワラサ)やシマアジ、カンパチ、ソウダガツオなどの大型回遊魚や、底層のイシガキダイやハタ、モロコといった根魚の大物も釣りの対象魚になるということだ。

もちろんクロダイやメジナ、アジ、イワシ、サバなどといった、釣り人に人気の高い魚種も大型のものが釣れるので、防波堤釣りといってあなどれない一級のポイントなのである。

しかし、外洋に面しているだけに波やうねり、風などの影響を受けやすい。ライフジャケットの着用はもちろん、安全を最優先したいものだ。


汽水域(河口部)の防波堤
川が海に流れ込んだり、潮の干満のある河口部は海水の塩分濃度がうすめられ、海でも川でもない環境をつくりだす。一般的に汽水域とよばれているのはこの場所のことだ。埠頭のいちばん奥にある防波堤は河口部にあることが多い(砂泥底の場合が多い)ので、こういった環境にすむ魚が対象となる。

汽水域に生息するのはクロダイ、キチヌ、サヨリ、スズキ(セイゴ、フッコ)、ボラ、ギンガメアジ(メッキ)、ハゼなどで、いずれも川から流れ出す小動物や小魚をエサにしている。

スズキやギンガメアジなどは、アユが海から遡上する春先や、産卵のために降海する晩秋に河口部に集まりエサをとる。
これらフィッシュイーター(魚食性の魚)が河口部に集まるころがルアー釣りの最盛期となるのだ。また、ハゼやサヨリは複雑な仕掛けも必要なく手軽に釣ることができるので、ファミリー釣行にはもってこいのターゲットとなる。

砂底や砂泥底の防波堤
入り江や内海の奥にある防波堤は、砂、泥底につくられることが少なくない(汽水域の防波堤なども)。砂泥底につくられた防波堤の特徴は、消波ブロックがなく、直立型防波堤であることが多いことで、港内に埠頭や桟橋があることも、砂泥底であることの目安になる。純粋な砂底や砂礫底であれば、海の色がコバルトブルーになっていることが多い。

湾内の底層には、アナゴ、カレイ、コチ類、シロギス、ハゼ、ゴンズイなどが生息し、中層から表層にかけてはスズキ(セイゴ、フシ三やボラも入り込んでいる(汽水域の魚と重なる場合が多い)。

岩礁底
岩礁帯は魚がエサをとったり身を隠すには最適の場所で、底層にすむ多くの定着性の魚の安住の地となっている。

岩礁の上につくられる防波堤に巨大なものはあまりなく、ほとんどが数十隻程度の漁船を守るための港である。岩礁底の防波堤を見つけるめやすとしては、岸壁の延長線上にあるということにつきる。

また、もともとは岩礁でなくても、防波堤をつくるさいに大量の石やブロックで根固めするので、結果的に岩礁底と同じ条件がうまれることも少なくない。こういった防波堤は沖めで巨大なものが多いので、魚の種類も多く魚の型も大きくなる。

港内の岩礁帯の底層に生息しているのは、アイナメ、ウミタナゴ、カサゴ、メバル、イカ、タコ類などで、港外ではそのほかにイシダイ、ブダイなどがいる。
中層部ではアジ、イワシ、サバ、イナダなどの回遊魚からイサキ、イシモチ、イスズミ、クロダイ、フエフキダイ、メジナなど多くの種類が生息している。


潮通しのいい防波堤の港外は、砂礫底の場合が多いので、イシモチ、サヨリ、シロギス、ヒラメ、アジ、イワシなどの外洋の回遊魚も釣りの対象になる。
砂底の防波堤でも沖合にあるものは、消波ブロックや捨て石があれば、アイナメ、メバル、カサゴ、メジナなどが生息していると考えられる。

3.防波堤のターゲット
多彩な魚が楽しめる
防波堤と言えばエサ釣り天国といったイメージを受けるかもしれないが、逆に考えてみると、小魚狙いのコマセが絶えることなく撒き続けられ、それを追ってフィッシュイーターのルアーターゲットたちが集まる場所とも言える。よって我々ルアーマンたちにとっても絶好のポイントなのだ。ターゲットが最も多く初心者にも手軽に楽しめるので、アングラーも絶えることがない。

ターゲットは回遊魚を含め、メッキ、カマス、セイゴーフッコ、カサゴ、タチウオなど
と多彩だ。ただし注意しなければならないのはエサ釣り師たちとのトラブル。釣り方の違いを認識して、先に釣っている人がいればひと声かけて気持ちいいフィッシングを心掛けよう。

季節に応じて楽しめる
防波堤はターゲットが多いと言っても一年中同じ魚が釣れているわけではない。当然季節に応じたターゲットたちが我々の相手をしてくれるのだが、このターケットを見極めるのが厄介だ。常に自分のアンテナを働かせて新聞の釣り情報などをチェックし、いつでも釣行できるようにしておこう。

特に回遊魚などは昨日釣れても今日は全く釣れないことだってよくある。しかし、常に何かしらのターゲットが存在しているので、根気よく釣り場に通っていることがいい結果を出す秘訣だろう。春先のセイゴやメバル、夏の回遊魚、秋から冬にかけてのメッキやカマス、冬のカサゴやアオリイカなど十分過ぎるほどのターゲットがいるので、自分のスタイルに合わせて楽しみたい。

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