1.イワナがいる場所
渓流の釣りといえば、イワナを思い浮かべる人が多いと思います。
イワナというのは幻の魚とよく言われるんですけど、僕にとっては、ちっちゃいころから近くの川でのイワナ釣りがメインだったから、幻でもなんでもなかったんですね。すぐ近くの川にたくさんいたんです。
イワナ釣りというのは、アマゴとかアユを釣るのに比べれば、はるかに簡単です。もちろん、そこに魚がいさえすればの話ですけれど……。
ところが、イワナのいる場所を見つけるというのが非常にむずかしい。じゃあ、どこにいるのかというと、すごい源流域、山のずっと奥へ、奥へとさかのぼったところにいるんです。
林道、つまり山の作業をする人のための道です。その林道の行き止まりになったようなところに車を停めて、そこからさらに歩いて入っていかなければならないような源流域にいるんです。
そこまで行けば、イワナはとても釣りやすい。なぜかというと、イワナが人にすれていない。釣り人に出会ったことがないから無警戒なんです。
2.イワナ釣りはちょうちん釣りで
サオは2メートルか3メートルの短いものを使います。糸もサオの半分ぐらいの長さで、餌をつけたら、ちょうちんをつるして歩くような感じで釣ります。投げたり振ったりせずに、そのままちょうちんをかざすように岩陰に餌をスーッと下ろしてやるんです。
つまりイワナを釣るときは餌を流す必要はないんです。イワナが待ち構えている鼻面に下ろしてやる。自然に流す必要のあるときは、長い糸を使ってナチュラルドリフトさせるんだけど、イワナの場合はすっと下ろすだけだから、ちょうちん釣りでいいわけです。
イワナを釣るような源流域に行くと、クモの巣とか夏草とか葦が生い茂っていて、草のトンネルみたいになっている場所があります。
イワナはそういうところにもいるから、そのときはサオをグーッと差し入れて釣りましょう。クモの巣が張っていたりすると、上からポッと餌を落とすことなんかできません。
クモの巣をハリスに巻きつけてしまうと、すごくじゃまになって、操作できなくなります。まず、サオを入れるだけのスペースを木の枝などでそっとあけておくといいんです。
さあ、いよいよ釣ります。川に魚が棲めそうな深さがあって、ちょっと岩陰になっていたら必ずそこにイワナがいると考えて餌を落としてみましょう。1回落としてみて、もしもそのとき変な落とし方をして魚をおどかしちゃったなと思ったら、もう1回落としてみて、それで反応がなければ次の場所に行きます。
1カ所で釣りながら、そのときにはもう次に行くところを探しているような感じ。いいときは餌を入れるたびにイワナが釣れるんです。そうやってポイントを探していると、時折、どうしてもサオも出せない本当に小さな隙間のような空間から釣りたくなることがあります。
そんなとき、うちの親父は餌と針をつまんで引いてサオをしならせて、パチンコのように放すんです。
それで小さな穴のような空間に仕掛けをビューンと飛ばす。それはうまいものです。そういう場所は先行者がいたとしても釣り残している場合もあるわけで、よく釣れるんです。
釣り残しの場所を狙うという手もあるんですね。まさかこんな小さな石の下に魚がいるなんて、という場所で釣れたりします。木の枝がじゃまをして釣りにくい場所をあえて狙うテクニックがあるんですね。
でもこれ、針と餌をとても柔らかく持たなければいけないし、ミミズを持つのがいやで糸を持ってやると、指に針が刺さることがあるから注意してください。
ミミズのような生餌はルアーとかフライと違って、うまく持たないとぶち切れてしまうんですね。放すタイミングがむずかしい。このコツをつかむとけっこう役に立つテクニックなんです。
3.イワナをおいしく食べるには
渓流の
キャンプには、米と味噌と塩ぐらいは持っていったほうがいいでしょうのあとはなんでもありますから。もちろん小さな鍋もかついでいきましょう。
もしもイワナの刺身を食べようと思ったら、いくつか注意することがあります。魚というのは釣ってからが大事。
魚の
うろこのにゅるにゅるが臭みのもとなので、土の上に落として汚れを洗ったりすると、その臭みが身の中に入ってしまいます。
だから、釣ったら、決して魚の表皮を傷つけないように、ていねいに扱うことです。だいたい魚というのは、じわっと殺しちゃうとまずくなるんです。これは、海の魚でも川の魚でも同じです。
魚を釣ったら、岩にガツンと頭をぶつけてすぐに殺してしまうこと。魚はビクの中で暴れているうちに、どんどんまずくなっていってしまうんです。
釣った魚はすぐにしめる、それが原則です。たとえば、魚を殺さないことで有名なフライフィッシングの国であるイギリスとかスコットランドでも、こん棒を売っているんですよ。それは釣ったサケなどの魚をカツンと殴るための棒なんです。
魚を変に苦しめないように殺す
マナーみたいなもの。ま、どっちにしろ、魚にとっては迷惑な話だけど。でも、せっかくだからおいしく食べたほうがいいものね。
もう一度いいますが、おいしく食べるためには、釣ったらすぐにしめることと皮のぬるぬるを身のほうにつけないこと。
もちろん自分の手にもつけな「ように要注意。手についたまま料理するとにおいが移るからです。まな板や包丁も、できれば皮や内臓を取るのと、身を切るのとは別にしたほうがいいでしょう。
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